複雑な情報を整理し、視覚的に比較・分析できる「マトリックス図」。ビジネスシーンでは、戦略立案やタスクの優先順位付け、競合比較など、あらゆる場面で活用されています。
本記事では、マトリックス図とは何かという基本から、評価項目の例、具体的な作り方、そしてすぐに使える無料テンプレートまで徹底解説します。
マトリックス図とは
マトリックス図とは、ある目的や課題に対する複数の要素を2つの軸を使って分類し、表の行と列に配置して、それぞれの関連度や対応を視覚的に表現する図表です。複雑な情報を整理し、意思決定をサポートするための重要なビジネスツールとなっています。
| マトリクス図 | 重要度 | 緊急度 | 資産価値 | 容易さ | コスト | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| プロジェクトA | 9 | 9 | 8 | 7 | 6 | 最優先で取り組む |
| プロジェクトB | 5 | 4 | 4 | 8 | 7 | 優先度は低いが取り組む |
| プロジェクトC | 9 | 7 | 10 | 3 | 10 | 中長期的に取り組む |
| プロジェクトD | 3 | 2 | 1 | 8 | 7 | 実行しない |
💡 マトリックス図の定義: 多くの情報を2つ(またはそれ以上)の事象で分類し、行と列に振り分けて配置することで、要素間の関連度や対応を明確にする図表のこと。
マトリックス図の語源
「マトリックス(Matrix)」という言葉は、本来「母岩・基盤」を意味し、数学では「行列」という意味で使われます。「長方形状かつ格子状」という行列のイメージを元にした表現が、ビジネスの場では多次元的な情報整理をするフレームワークとして使われるようになりました。
マトリックス図が活用される場面
- 品質管理:QC7つ道具や新QC7つ道具として製造業の現場で活用
- マーケティング:市場分析や競合分析でのポジショニング評価

- プロジェクト管理:タスク管理や進捗管理での優先度判断
- 人事評価:従業員の能力評価や適性判断
- 戦略立案:事業戦略や新商品開発の方針決定
- 日常業務:予定調整や会議の参加可否確認
マトリックス図は、「ダブりなく、漏れなく」という重要な原則(MECE)に基づいて情報を整理することで、より精密な分析が可能になります。
マトリックス図とMECEの関係
マトリックス図を正しく活用するには、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)という考え方が重要です。
| 用語 | 意味 | 説明 |
|---|---|---|
| Mutually Exclusive | 相互に排他的 | 分類される項目間にダブリがないこと |
| Collectively Exhaustive | 集合的に網羅的 | 全ての項目が漏れなく分類されていること |
MECE原則がマトリックス図に重要な理由
マトリックス図は升目状にタスクや情報をまとめることで、MECEの原則を自然と満たすことができます。これにより、以下のメリットが得られます:
- 重複していない正確な分類ができる
- 見落としや漏れがない包括的な分析が可能
- 複数の人が同じ認識を共有しやすくなる
- 意思決定の根拠がより客観的になる
MECE原則の活用例
会議の予定を調整する際、マトリックス図では参加者を行に、候補日を列に配置します。この方法により、全ての参加者が全ての候補日についての可否を一目で確認でき、最適な日程を効率的に見つけることができます。
マトリックス図の種類
マトリックス図は、分析する要素の数によって複数の種類に分けられます。それぞれに異なる活用場面があります。
| タイプ | 分析要素数 | 複雑度 | 使用頻度 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| L型 | 2つ | 低 | 非常に高い | 基本的な比較・分類 |
| T型 | 3つ | 中 | 中程度 | 複数視点での分析 |
| X型 | 4つ | 高 | 低い | 高度な多元分析 |
※L型が最も頻繁に使用されます。複雑すぎる分析は理解しづらくなるため、通常はL型またはT型で十分対応できます。
L型マトリックス(2つの要素を分析)
| 要件 | 顧客:食品 | 顧客:医療供給 | 顧客:一般 |
|---|---|---|---|
| 品質タイプ | 食品医薬品局 | 食品医薬品局 | ISO検査 |
| HACCPプログラム | 必須 | 必須 | オプション |
特徴:最も基本的で使用頻度が高いマトリックス図です。
- 2つの要素を分析する場合に使用
- 一方の要素を縦軸に、もう一方を横軸に配置
- 最も直感的で理解しやすい形式
活用例:
- 参加者(行)× 候補日(列)での予定調整
- 製品(行)× 市場(列)での販売戦略
- 効果(高低)× 実現難度(難易)での優先順位判定
T型マトリックス(3つの要素を分析)
| ラボ管理 | |||
|---|---|---|---|
| トレーニング | |||
| 特別プロジェクト | |||
| トム | ハリー | ジェニー | |
| デバイスFA | 2 | 3 | 1 |
| パッケージFA | 2 | 1 | 3 |
| 信頼性 | 3 | 2 | 2 |
特徴:L型を2つ組み合わせた形状です。
- 3つの要素を分析する場合に使用
- すべての組み合わせを考慮するのではなく、1つの要素に対して残り2つの要素との組み合わせを評価
- より複雑な分析に対応可能
活用例:
- A手段 × B機能、A手段 × C評価 の複数観点での分析
- 自動化技術 × 導入部門、自動化技術 × 投資額 での評価
X型マトリックス(4つの要素を分析)

画像リソース:EdrawMax
特徴:L型を4つ組み合わせた形状です。
- 4つの要素を分析する場合に使用
- 最も複雑な多元的分析に対応
- 作成には高い専門性が必要
活用例:
- 複数視点での総合的な事業評価
- 複雑な意思決定が必要なプロジェクト管理
マトリックス図の作り方
効果的なマトリックス図を作成するための、段階的な手順を説明します。
1目的と分析軸を明確にする
まず最初に、マトリックス図で何を分析したいのかを明確にします。次に、その目的を達成するために必要な2つの分析軸(または3つ以上)を決定します。
例:「新製品の優先順位を決定するため」→ 軸:「市場規模(大小)」と「技術的実現難度(高低)」
2分析対象のリストアップ
マトリックスに配置する具体的な項目をすべてリストアップします。この際、MECE原則に従い、ダブりがなく、漏れがないように注意します。
例:検討中の新製品A、B、C、Dをリストアップ
3縦軸と横軸を設定
明確にした分析軸を、マトリックスの行(縦軸)と列(横軸)に配置します。一方の軸はリストアップした項目を、もう一方の軸は評価基準を配置することが多いです。

4各セルに情報を記入
マトリックスの各セルに、適切な情報を記入します。記号(○、△、×)、数値、色分けなど、分析の目的に応じて選択します。
記入方法の例:
- 記号:○(実現可能)、△(要検討)、×(実現困難)
- 数値:1~5段階評価
- 色:優先度を色分け
5 パターンや関係性を分析
完成したマトリックス図を眺めて、パターンや関係性を発見します。どの象限に多くの項目が集中しているのか、例外的な項目がないかなどを確認します。
6結論と行動計画を導出
分析結果から導き出せる結論や洞察をまとめます。その後、必要なアクションプランを策定します。
マトリックス図作成時の注意点
- 軸の定義を明確に:各軸が何を表しているのかを曖昧にしない
- 単位を統一:同じ軸上の項目は比較可能な単位で表示

- データの信頼性:記入する情報が正確で信頼性があるか確認
- 過度な複雑化を避ける:必要以上に多くの要素を詰め込まない
- 視覚的なわかりやすさ:色や記号を効果的に使用して理解しやすく
マトリックス図の無料テンプレート
効率的にマトリックス図を作成するための、無料で使えるテンプレートが必要で、ここではテンプレート入手方法を紹介します。
無料マトリックステンプレート配布サイト①ラクプレ
ラクプレは、ビジネスで即活用できる高品質なパワーポイントテンプレートを無料で提供するサイトです。

最大の特徴は、汎用性が高く洗練されたデザインです。重要度や緊急度を整理する「4象限マトリックス」をはじめ、SWOT分析やポジショニングマップなど、思考整理に欠かせない図解が豊富に揃っています。会員登録不要で1クリックダウンロードできるため、資料作成の時間を大幅に短縮したいビジネスパーソンに最適です。
サイト:https://raku-pre.com/matrix/
無料マトリックステンプレート配布サイト②EdrawMax
「EdrawMax(エドラマックス)」は、2,000種類以上の豊富なテンプレートを備えた、オールインワンの作図ソフトです。

ビジネスで多用されるマトリックステンプレートが非常に充実しており、SWOT分析やアンゾフの成長行列なども、ドラッグ&ドロップの直感操作ですぐに作成できます。
プロ仕様のデザイン性と、初心者でも迷わない操作性が両立されているのが魅力。無料版でも高クオリティな図解が手軽に手に入る、非常に強力なツールです。
サイト:https://edraw.wondershare.jp/org-chart/matrix-organizational-chart.html
無料マトリックステンプレート配布サイト③Slides carnival
「Slides Carnival」は、デザイン性の高いスライドテンプレートを無料で提供する人気サイトです。

最大の特徴は、洗練されたビジュアルと実用性の高さにあります。マトリックス図のテンプレートも豊富で、表形式からクリエイティブな図解まで、プレゼンをワンランク上げる洗練された素材が揃っています。
GoogleスライドやPowerPointに完全対応しており、ダウンロードもスムーズ。効率よく「伝わる」資料を作りたい方に、まずおすすめしたいサイトです。
マトリックステンプレートを対応できるツール
マトリックステンプレート無料配布サイトからダウンロードしたテンプレートは以下のツール②導入して、利用することがお勧めです。
| ツール | 特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| PowerPoint | 見栄えの良い資料作成に最適、図形機能が充実 | プレゼン資料、提案書 |
| Excel | データ分析に強い、計算機能が豊富 | データ分析、意思決定支援 |
| Google Slides | クラウドベース、複数人で共同編集可能 | チーム協働、オンラインプレゼン |
| Canva | テンプレートが豊富、デザイン性が高い | マーケティング資料、SNS発信 |
よくある質問
Q1: マトリックス図とグラフの違いは何ですか?
マトリックス図はカテゴリカルな情報(○×△など)を行列に配置し、要素間の関連性や対応を明確にする図表です。一方、グラフは数値データを視覚化し、量的な関係や変化を表現します。
ポイント: マトリックス図は定性的な分析に、グラフは定量的な分析に向いています。
Q2: マトリックス図を作成する際の最大のポイントは?
MECE原則(漏れなく、ダブりなく)を徹底することが最も重要です。これにより分析の精度が大幅に向上します。
アドバイス: 軸の定義を明確にし、分析対象のすべての項目が必ずどこかのセルに配置されるように構成しましょう。
Q3: マトリックス図を使いこなすコツは?
目的を達成するために「軸の選択」を慎重に行うこと、そして複雑な形式(T型やX型)を避け、シンプルなL型から活用することが大切です。
ステップ: 異なる視点で複数回作成したり、関係者と一緒にチームで作成したりすることで、より多角的な分析が可能になります。
Q4: マトリックス図が新QC7つ道具に含まれるのはなぜ?
新QC7つ道具は、数値データ(QC7つ道具)ではなく、定性的情報を体系的に整理して複雑な問題を解決するために開発されました。
理由: マトリックス図は、多様な情報をMECEに整理し、迅速な意思決定を支援する強力なツールであるため、その中核手法として位置づけられています。
Q5: マトリックス図とポジショニングマップの違いは?
マトリックス図は記号を用いたカテゴリカルな分類を行い、品質管理や業務改善に用いられます。ポジショニングマップは
終わりに
マトリックス図は、複雑に絡み合った情報を整理し、進むべき道を明確にするための非常に強力なツールです。MECEの原則を意識しながら、目的に合った「軸」を設定することで、主観に頼らない客観的な分析が可能になります。
まずはシンプルなL型から取り入れ、慣れてきたら用途に応じてテンプレートを活用してみましょう。視覚的に比較・分析を行う習慣をつけることで、日々のタスク管理から重要な戦略立案まで、あらゆる意思決定のスピードと精度が飛躍的に向上するはずです。本記事でご紹介した手順やツールを参考に、ぜひ今日から実務に役立ててください。

